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日進月歩

日進月歩

普通の裂け目・6

嫌いだった。
全て。
何もかも嫌だった。




だから
いつも死を想っていた。






ここに来るようになって
何日がたつのだろう。
それすら分からなかった。

もとより
生きていることが辛かった。

曜日感覚なんて
あんな腐ったような教室で
補えるわけでもなく。




ここに来る理由が
わからなかったけど。

ただ
同じ匂いを探してた。



見つからなければいいと思いながら
見つけた瞬間に

私は孤独から救われたと 少なくともそう感じた。


そんな都合のいい思考に
ぞっとした。








それでもやっぱり孤独だった。
孤独には慣れていたから
特別にどうも思わなかった。




何も変える力を私は持っていないのだから。




「朝からも….おきていようと思うんだ」


孤独を読み取られたのかと怖くなった。
桧埜ちゃんはそれを口にした。


長い夜は
孤独を一層孤独にした。


朝も
同じ空間にいながら
孤独を感じずにいられなかった。


同じ空間にいたから
孤独を感じていた。


「ァタシも朝 一番に挨拶したかったんだ」


朝のあいさつを
昼にするのでなく。



同時に嫌悪が走った。


利用してしまうのではないか。
夜 眠れないのに
朝は天敵のはずなのに。


口にしてしまったことを後悔した。


コノ人ヲ 壊シテシマウ

私だから
夜 眠れぬ私だから

分かる。



朝は天敵。





だけど
そのとき

不器用にもはにかんだ
桧埜の笑みに



言葉は
飲み込まれた。



無理はしないでね。



その言葉さえ
かけるのをためらうほどに
強い意志の表れた顔を目の当たりにして


胃が きしみだすのを感じた。




――――強い。

私に強さがあれば。



強さが欲しい。



ふと
また涙腺が緩んだ気がして
あわててグラウンドへと顔を向けた。


そして
泣きそうになったのを隠すために
また

微笑んだ。






グラウンドで練習を繰りかえしやっている奴らがすべて
馬鹿に見えて
ちっぽけに見えて


うらやましくみえたりもした。




―――桧埜ちゃんは強いね



いえない言葉が
蒼く広い空に消えていった。



<Production by風上 遥>


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